住宅ローンを無理なく返せる額はいくら?決める基準とスムーズに返済する方法を解説

住宅ローンを借りたいけど、ちゃんと完済できるのか不安……

いくらくらいなら無理なく返せるかなぁ?

無理なく返せる金額はいくらなのか知りたい!
住宅ローンの返済は数十年にわたるため、将来のライフプランを大きく左右します。
前提として、多くの金融機関が提示する「借りられる額」は「無理なく返せる額」とイコールではありません。「借りられる額」ギリギリまで借りてしまうと、教育費や老後資金の準備が滞ったり、予期せぬ出費に対応できなくなったりする危険性があります。
本記事では、無理なく返済できる住宅ローンの金額を見極めるための具体的な指標や、借入額を決定する際に考慮すべきポイントを解説します。
- 無理なく返せる住宅ローンの額を把握するための指標
- 住宅ローンの借入額を決める際に押さえるべきポイント
- 無理なく返済できる借入額の目安
これらの情報を参考に、将来にわたって安心して支払い続けられる、身の丈に合った資金計画を立てていきましょう。
無理なく返せる住宅ローンの額を把握するための指標

住宅ローンを無理なく返済するために重要なのは、ご自身にとって適正な金額の範囲で借り入れることです。無理のない金額がいくらなのか判断する基準が「年間返済率」と「年収倍率」の2つです。
ここでは、2つの判断基準について計算方法や目安、活用するうえでの注意点も踏まえたうえで解説します。
年間返済率
年間返済率とは、年収に対して1年間に返済する住宅ローンの返済額が占める割合を示す指標です。返済比率の数値が低いほど、家計に占めるローン返済の負担が軽くなり、教育費や老後資金など将来のための貯蓄にも余裕が生まれます。
計算式は「年間のローン返済額 ÷ 年収 × 100」という式で簡単に算出できます。
年収の数値は一般的には額面年収を用いるものの、保守的に見積もるのであれば手取り年収を当てはめるのがおすすめです。理想の割合は手取り収入の20%以内、高くても25%以内であれば無理なく返済できるとされています。
年収倍率
年収倍率とは、住宅ローンの借入希望額がご自身の年収の何倍に相当するかを示す指標です。
計算式は「住宅ローン借入額 ÷ 年収」で算出され、金融機関が融資審査の際に、利用者に対していくらまで融資しても良いかを判断する基準となります。一般的には、年収倍率は「5~7倍以内」とされています。
年収倍率を元に借入額を決める際は、借入期間に応じて倍率を調整しましょう。年収倍率のみで判断してしまうと、毎月の返済額が高くなり、返済負担が大きくなることが考えられます。
年収倍率だけでなく、上述した年間返済率と併せて借入額を決めるようにしましょう。
無理なく返せる住宅ローンの借入額を決める際に押さえるべきポイント

無理なく返せる住宅ローンの金額を設定するためには、あらゆる要素を総合的に考慮する必要があります。表面的な数字だけで判断すると、ライフイベントの変化が訪れたときに対応できず、家計を圧迫しかねません。
無理なく返済するために押さえるべきポイントは、以下の6つです。
- 手取り収入で計画を立てる
- 金利タイプの違い(固定・変動)を理解する
- 変動金利の場合は金利が上昇しても耐えられるかシミュレートする
- 「借りられる額」=「返せる額」ではないと理解する
- 返済期間はライフイベントに合わせて設計する
- ボーナス払いはできるだけ避ける
ひとつずつ解説します。
手取り収入で計画を立てる
住宅ローンの返済計画を立てる際は、税込みの「額面年収」ではなく、実際に自由に使える「手取り収入」を基準に考えることが重要です。所得税や住民税、社会保険料などが差し引かれた手取りの金額をもとに計画を立てることで、より現実的かつ無理のない返済ができます。
また、手取り収入には毎月安定して得られる収入だけで考えるのがおすすめです。ボーナスや残業代といった変動要素の大きい収入を計算に含めると、いざ支給されなかったときに計画が大きく狂うためです。
金利タイプの違い(固定・変動)を理解する
住宅ローンの金利には主に3つのタイプがあり、それぞれの特徴を理解して選択することが大切です。
- 固定金利
⇒返済期間中の金利が一定で返済額が変わらないため、将来の見通しが立てやすい。ただし、変動金利に比べて金利は高めに設定される傾向がある。 - 変動金利
⇒固定金利よりは利率が低めだが、市場金利の変動によって将来的に上昇し、返済額が増えるリスクがある。 - 固定期間選択型
⇒当初の数年間は金利が固定され、期間終了後に変動金利に移行するか、再度固定金利を選び直すかを選択できるタイプ。
子どもの教育費がかかる時期や老後の資金計画など、ご自身の将来設計を考慮したうえで、最適な金利タイプを選ぶ必要があります。
変動金利の場合は金利が上昇しても耐えられるかシミュレートする
変動金利は契約当初の金利が固定金利よりも低いため、支払い負担の低さに魅力を感じることでしょう。しかし、将来の市場の動向によって金利が上昇する可能性があることを念頭に入れながら、返済計画を立てる必要があります。
もし金利が年1~2%上昇し、毎月の返済額が増加した際に家計が耐えられるかを必ずシミュレートしておきましょう。特に、お子様の教育費が増加する時期やご自身の老後資金を準備する期間と金利上昇が重なると、返済が著しく困難になるリスクがあります。
シミュレーションツールなどを活用し「将来も継続して支払えるか」という、長期的な視点で判断することが重要です。
「借りられる額」=「返せる額」ではないと理解する
金融機関が審査のうえで提示する「融資可能な金額」は、あくまで申込者の返済能力を基に算出した上限額に過ぎません。金融機関が提示する金額は、各家庭の「安心して返せる額」とは根本的に異なります。
金融機関が提示する金額の上限近くまで借り入れてしまうと、突発的な出費に対応できなくなる恐れがあります。よくある突発的な出費の例は、以下のとおりです。
- 子どもの教育費
- 車の買い替え
- 親の介護
- 住居の修繕・リフォーム など
したがって、金融機関から提示される金額は鵜呑みにせず、無理なく返済できる金額をご自身で計算することが大切です。
返済期間はライフイベントに合わせて設計する
住宅ローンの返済期間をどのように設定するかは、毎月の返済負担と総返済額のバランスを考えるうえで非常に重要な要素です。返済期間を長く設定すれば月々の返済額は軽減される反面、支払う利息の総額が増え、結果的に総返済額は大きくなります。
一方で、返済期間を短くすると利息の総額は減らせるものの月々の返済負担が重くなり、日々の家計を圧迫する可能性があります。
最も重要なのは、定年退職を迎える年齢までに完済できる計画を立てることです。年金生活の中でローン返済が続くと、老後生活に大きく支障をきたしてしまいます。
定年退職後まで返済期間が長引く場合は、繰上返済により借入期間を短縮することを意識しましょう。
ボーナス払いはできるだけ避ける
ボーナス払いを併用すると毎月の返済額を低く抑えられるため、一見すると返済が楽になるように感じられるかもしれません。しかし、ボーナスは企業の業績や個人の評価によって支給額が変動したり、場合によっては支給されなかったりする不確実な収入です。
ボーナスを返済計画の柱に組み込んでしまうと、万が一に減額された際に家計が立ち行かなくなるリスクが非常に高くなります。
したがって、最も安全な返済計画は、毎月の安定した給与収入の範囲内だけで完済できるように設定することです。ボーナスは繰上返済の原資として考えると、住宅ローンの返済がよりスムーズになるでしょう。
ライフプランに合わせて借入額を考えるポイント

住宅ローンの借入額を決める際は、その間に起こりうるさまざまなライフイベントをあらかじめ想定する必要があります。目先の返済額だけでなく、将来の家族構成の変化や支出の増減を見据えた、長期的な視点での資金計画が不可欠です。
将来にわたって安定した返済を続けるために、ライフプランと照らし合わせて考慮すべきポイントは、以下のとおりです。
- 将来のリフォーム費用・固定資産税・維持費も返済計画に含める
- 子どもの教育費ピークとローン返済が重ならないように計画する
- 退職後もローンが残らないようにする
- 共働き世帯なら収入合算だけでなく「どちらかの収入でも払えるか」を想定する
- ペアローンは慎重に判断する
ひとつずつ見ていきましょう。
将来のリフォーム費用・固定資産税・維持費も返済計画に含める
住宅を購入すると、ローンの返済以外にもさまざまな費用が継続的に発生することを忘れてはなりません。組み込むべき主な費用は、以下のとおりです。
- 将来的なリフォーム費用
⇒外壁の塗り替え、給湯器の交換など - 固定資産税
- 火災保険料 など
上記の費用は別途現金で用意する必要があるため、ローン返済額をギリギリに設定すると、いざというときに対応できなくなります。ローン返済と並行して住宅の維持費を用意できるよう、返済比率には十分な余裕を持たせることが重要です。
子どもの教育費ピークとローン返済が重ならないように計画する
子どもの成長に伴い教育費は段階的に増加し、特に大学進学のタイミングでは百万円単位のまとまった資金が必要になることが一般的です。教育費の負担が最も重くなる時期と住宅ローンの返済が重なってしまうと、家計が厳しい状況に陥る可能性があります。
実際に子どもの大学進学は国公立であっても、高校に比べると年間20万~30万円も上乗せされます。その中から住宅ローンをねん出するのが困難な方も、少なくありません。
返済できないという事態を避けるために、子どもの進学時期を予測し、その期間であっても滞りなく返済できるように計画を立てましょう。
退職後もローンが残らないようにする
老後の主な収入源は公的年金となるため、一般的には現役時代と比較して収入が大幅に減少します。そのような状況で住宅ローンの返済が残っていると、生活費を著しく圧迫し、ゆとりのある老後生活を送ることが困難になる可能性があります。
理想としては、定年退職を迎える年齢までに住宅ローンを完済できる返済期間を設定することです。
もし長めの返済期間を設定する場合は、老後に負担を残さないために、退職金の一部を繰上返済に充てるなどの対策を講じましょう。
共働き世帯なら収入合算だけでなく「どちらかの収入でも払えるか」を想定する
共働き世帯の場合、夫婦の収入を合算して住宅ローンを申し込むと借入可能額を大幅に増やせるため、検討するご家族は多いでしょう。しかし、将来的にどちらかの収入が減少または途絶えてしまうリスクも考慮しなければなりません。
- 出産・育児
- 転職
- 病気 など
最も安全な考え方は、借入額の上限を夫婦どちらかの収入だけでも無理なく返済を続けられる金額とすることです。万が一の事態が発生しても家計が破綻しないよう、収入合算で算出された借入可能額に安易に頼らず、保守的な資金計画を立てることが重要です。
ペアローンは慎重に判断する
借入額を増やす選択肢として、夫婦それぞれがお互いに連帯保証人になり、住宅ローン契約者となる「ペアローン」があります。メリットは借入額を増やせることに加え、それぞれが住宅ローン控除を受けられることが挙げられます。
しかし、安易に利用してしまうと後々になって大きなトラブルに発展しかねません。実際に、離婚する際の財産分与やローンの扱いが複雑になったり、どちらかが働けなくなった場合に返済リスクが倍増したりといったデメリットを抱えています。
契約する際はメリットだけでなくリスクも十分に理解し、将来起こりうるさまざまな状況を想定したうえで、慎重に判断しましょう。
【年収別】住宅ローンの目安借入額

住宅ローンの借入額はいくらまでであれば無理なく返せるのか、気になる人は多いでしょう。借入額を判断する基準のひとつが、年収です。
ここでは、世帯年収別に手取り収入から算出した返済額の目安と、それに基づいた借入可能額のシミュレーションを紹介します。
なお、本項で紹介する数値はあくまで一般的な目安であり、最適な金額は家族構成やライフプラン、金利の変動によって異なります。ご自身の状況と照らし合わせながら、どの程度の借入額が現実的であるかを把握するための参考としてください。
世帯年収300万円の場合
世帯年収300万円の場合、所得税や社会保険料を差し引いた手取り年収は245万円程度となり、毎月の手取りは約20万円です。
この収入で無理なく返済できるローン借入額は、手取りの20%である約4万円から、25%にあたる約5万円が安心できるラインと言えます。返済期間が35年で金利が年1.0%および年2.0%の場合における借入額は、以下のとおりです。
| 金利(年) | 借入額 |
|---|---|
| 1.0% | 1,500万~1,800万円程度 |
| 2.0% | 1,200万~1,500万円程度 |
この金額で購入できる物件は限られるため、自己資金(頭金)を準備して借入額を抑えることが求められます。
世帯年収400万円の場合
世帯年収が400万円の場合における手取り年収は約325万円、月々の手取りに換算すると約27万円となります。
手取り収入の20%から25%を返済に充てると仮定すると、年間の返済額は65万~81万円程度、月々の返済額にして約5.5万~6.7万円が適切です。返済期間が35年の場合における借入額は、以下のとおりです。
| 金利(年) | 借入額 |
|---|---|
| 1.0% | 1,900万〜2,300万円程度 |
| 2.0% | 1,600万~2,000万円 |
この金額で現実的な選択肢に入るのは、郊外の戸建てや中古マンションとなるでしょう。
世帯年収500万円の場合
世帯年収500万円の方の手取り年収は約390万円程度となり、月々の手取りは約32万円です。
無理のない返済計画である手取り20~25%を設定すると、年間の返済額は78万~97万円程度、月々の返済額に換算して6.5万~8万円程度です。返済期間が35年の場合における借入額は、以下のとおりです。
| 金利(年) | 借入額 |
|---|---|
| 1.0% | 2,400万〜2,800万円程度 |
| 2.0% | 1,900万~2,400万円程度 |
この返済額を基にすると、郊外であれば新築戸建ても選択肢に入るでしょう。
世帯年収700万円の場合
世帯年収700万円になると手取り年収は約530万円、月々の手取りは約44万円と、家計にも比較的余裕が出てきます。
手取り収入に対する返済比率20~25%を目安にすると、年間の返済額は106万~133万円程度が適切な範囲です。月々の返済額に換算すると、約8.8万~11万円が無理のないラインとなります。
| 金利(年) | 借入額 |
|---|---|
| 1.0% | 3,100万〜3,900万円程度 |
| 2.0% | 2,600万~3,300万円程度 |
上記の借入額であれば、郊外の新築一戸建てが検討できる範囲と言えます。また、都市部であっても中古マンションであれば選択肢に入れられるでしょう。
世帯年収1000万円の場合
世帯年収が1000万円の場合における手取り年収は約730万円、月々の手取りは約60万円が目安です。手取りの20~25%にあたる年間返済額は146万~183万円程度となり、月々の返済額にすると約12万~15万円が安心できるラインです。
| 金利(年) | 借入額 |
|---|---|
| 1.0% | 4,300万〜5,300万円程度 |
| 2.0% | 3,600万~4,500万円程度 |
この返済額から逆算した目安借入額であれば、都心のマンションやグレードの高い戸建ても選択肢に入ります。
ただし、収入が多いほど生活水準も高くなる傾向があるため、支出管理を怠ると住宅ローン破綻に陥る可能性は十分にあります。住宅ローンだけに囚われず、他の生活費も見ながら家計のバランスを取ることが大切です。
無理なく返済するためには住宅ローン選びが重要!押さえるべきポイント

無理のない返済計画を実現するためには、借入額の設定だけでなく、どの住宅ローン商品を選ぶかという点も極めて重要になります。金融機関によってサービスはそれぞれ異なり、その選択が将来の総返済額に大きく影響します。
ご自身の状況に最適な住宅ローンを見極めるために、契約前に比較検討すべきポイントは、以下の5つです。
- 自分のライフプラン・価値観に合う金利タイプを選ぶ
- 繰上返済の条件を事前に確認する
- 団体信用生命保険の保障範囲や特約を比較して選ぶ
- 保証料と融資手数料を比較する
- 返済期間が長くなるほど総返済額は増えることを理解する
ひとつずつ見ていきましょう。
自分のライフプラン・価値観に合う金利タイプを選ぶ
住宅ローンの金利タイプは、将来の返済計画を大きく左右するため、ご自身の価値観やライフプランに沿った選択が求められます。
当初の返済額を抑えたい場合は「変動金利」が選択肢となります。その間に資産形成に努めたり、他の支払いに充てたりすることで、適切に家計を管理できるでしょう。
しかし、金利が上昇すると返済額が増えるため、家計の破綻につながる可能性があることを想定しなければなりません。
将来の金利上昇リスクを避け、安定した返済を続けたいのであれば「全期間固定金利」が適しています。
目先の金利に囚われずに、子どもの進学や転職といった将来のライフイベントを見据え、ご自身のリスク許容度に応じて金利タイプを選ぶことが大切です。
繰上返済の条件を事前に確認する
繰上返済は将来の利息負担を軽減する有効な手段ですが、条件は金融機関によって大きく異なります。一部の金融機関では、インターネット経由であれば手数料無料で、1円単位から繰上返済が可能な場合があります。
一方で、手続きに手数料が必要であったり返済可能な最低金額が設定されていたりする場合もあるため、事前の確認が不可欠です。特に手数料が発生する場合、繰上返済により抑制できる利息分を相殺できず、トータルの支払額が増えるケースもあります。
総返済額を抑えるために繰上返済は有効ですが、条件次第では減らない場合もあるため、実行する前に確認することが大切です。
団体信用生命保険の保障範囲や特約を比較して選ぶ
団体信用生命保険(団信)は契約者に万が一のことがあった場合に、残された家族を守るための重要な保険です。契約者が死亡もしくは高度障害に陥ったときに、ローン残高がゼロになります。金融機関によっては、がんや三大疾病などを保障する特約を金利上乗せで付帯できます。
必要な保障の範囲は、以下の要素を踏まえて総合的に判断しましょう。
- ご自身の健康状態
- 家族構成
- 既存の生命保険の加入状況 など
保障を手厚くすれば安心感は増す一方で毎月の返済額も増加するため、コストとのバランスを慎重に検討することが大切です。
保証料と融資手数料を比較する
住宅ローンを契約する際には、利息とは別に保証料や融資手数料といった諸費用が発生します。
「保証料型」は、数十万円単位の費用を契約時に一括で支払う、もしくは金利に上乗せして分割で支払う方式です。金利上乗せ方式であれば、初期費用を抑えられるといったメリットがあります。
一方の「融資手数料型」は、借入額に対して一定の料率を乗じた金額を支払う方式です。借入期間が長いほど、毎月の返済額や総返済額を抑えられる傾向があります。
どちらのタイプが総支払額で有利になるかは、借入額や返済期間によって異なるため、ご自身の優先順位に合わせて選ぶことが重要です。
返済期間が長くなるほど総返済額は増えることを理解する
返済期間を長く設定すれば毎月の返済額を低く抑えられる反面、支払い利息の総額が大きく膨らみます。参考までに、3,000万円を金利2.0%(年)で借り入れた場合、返済期間ごとにおける総返済額を以下の表にまとめました。
| 返済期間 | 月返済額 | 総返済額 | 支払利息総額 |
|---|---|---|---|
| 20年 | 151,765円 | 36,423,600円 | 6,423,600円 |
| 25年 | 127,156円 | 38,146,890円 | 8,146,890円 |
| 30年 | 110,886円 | 39,918,903円 | 9,918,903円 |
| 35年 | 99,379円 | 41,739,109円 | 11,739,109円 |
上記より、返済期間が35年だと20年の場合よりも毎月の返済額を5万円ほど抑えられる一方で、利息の支払額は500万円以上も高くなります。月々の負担だけではなく、最終的な総返済額に目を向けることで、適切な住宅ローンの返済プランを決められるでしょう。
日々の家計管理で無理なく住宅ローンを返済するポイント

住宅ローンの契約はゴールではなく、長期にわたる返済生活のスタートです。無理のない返済を継続するためには、ローン契約後の日々の家計管理が極めて重要になります。
数十年にわたる返済期間を安心して乗り切るために押さえるべき家計管理のポイントは、以下のとおりです。
- 家計に占める住宅ローン返済の割合を定期的にチェックする
- 家計簿を定期的に見直して返済余力を確保する
- 住宅ローン控除を活用する
ひとつずつ見ていきましょう。
家計に占める住宅ローン返済の割合を定期的にチェックする
住宅ローンの返済が家計を過度に圧迫していないかを確認するために、手取り収入に占める返済割合を定期的に把握することが大切です。
理想の割合は年間返済率を手取り収入の20%以内、最大でも25%以内に抑えることです。しかし実際には、理想のバランスは収入の増減や子どもの教育費などにより変動します。
年に一度など、タイミングを決めて年間返済率をチェックしてみましょう。もし負担が重くなっているようであれば、家計の見直しや繰上返済を検討するきっかけになります。
ローン返済が生活を切り詰める原因になっていないか、常に客観的な数値で確認する習慣を持つことで、長期的に無理なく返済できるようになります。
家計簿を定期的に見直して返済余力を確保する
数十年という長い返済期間中には、予期せぬ支出の増加や収入の減少が起こりえます。こうした変化に対応し、安定して返済を続けるためには家計簿を定期的に見直し、無駄な支出を削減して返済余力を確保しましょう。
特に、固定費は一度見直すだけで継続的な節約効果が期待できます。
- 通信費
- 保険料
- 利用頻度の低いサブスクリプションサービス など
家計簿アプリなどを活用して支出を「見える化」し、ローン返済で家計が苦しくなる前に早めに対策を打つことが重要です。
住宅ローン控除を活用する
住宅ローンを利用するのであれば、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を積極的に活用しましょう。住宅ローン控除は年末時点でのローン残高の0.7%を、最大13年間にわたって所得税や住民税から差し引ける制度です。
住宅ローン控除が適用される金額は物件の種類によって異なり、最大控除額について以下の表にまとめました。
| 新築・中古 | 住宅の種類 | 上限金額 | 最大控除額 |
|---|---|---|---|
| 新築 | 長期優良住宅・低炭素住宅 | 5,000万円 | 35万円 |
| 新築 | ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 31.5万円 |
| 新築 | 省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 | 28万円 |
| 中古 | 長期優良住宅・低炭素住宅 ZEH水準省エネ住宅 省エネ基準適合住宅 | 3,000万円 | 21万円 |
| 中古 | 上記以外 | 2,000万円 | 14万円 |
年間で数十万円の税金が還付されるため、実質的な返済負担を大きく軽減できます。適用するためには、初年度はご自身で確定申告を行う必要があるものの、2年目以降は会社員であれば年末調整で手続きが完了します。
還付されたお金を貯蓄や教育費に充てるだけでなく、繰上返済の原資として活用すれば、さらに効率よく総返済額を減らせるでしょう。
住宅ローン返済時に将来を見据えて取るべき戦略

住宅ローンはただ毎月決められた額を返済し続けるだけでなく、自分の行動次第で将来の返済負担を軽くできる場合があります。住宅ローンの返済負担を軽くするために将来取ったほうが良い行動は、以下のとおりです。
- 繰上返済を活用して総返済額を減らす
- 借り換えや返済期間の見直しを定期的に検討する
- 団体信用生命保険でリスクに備える
- 無理なく返済できる範囲で資産形成に取り組む
- 転職・休職・育休など収入減のライフイベントを想定して備える
実行することで返済負担が軽くなるだけでなく、万が一への備えにもなるため、ぜひ参考にしてください。
繰上返済を活用して総返済額を減らす
繰上返済を活用することで総返済額が減るため、返済負担がかなり軽くなります。繰上返済とは、月々の返済とは別にまとまった資金でローン元金の一部を前倒しで返済する方法で、以下の2種類があります。
- 返済期間短縮型
⇒毎月の返済額は据え置きで、返済期間を短縮する。総返済額を減らす効果は返済額軽減型よりも大きい - 返済額軽減型
⇒返済期間を据え置きして、毎月の返済額を軽減する
例えば残債2500万円、金利2%、残り期間30年のローンで100万円を繰上返済した場合、削減できる利息額は期間短縮型の場合で約33万円です。
| 従来通りの返済 | 繰上返済の実行 | 差額 | |
|---|---|---|---|
| 繰上返済 | ― | 100万円 | ― |
| 繰上返済後の残高 | 2,500万円 | 2,400万円 | ― |
| 毎月の返済額 | 92,404円 | 88,708円 | 3,696円 |
| ローンの返済額 | 33,265,615円 | 31,934,970円 | 330,645円 |
| 総返済額 | 33,265,615円 | 32,934,970円 (=31,934,970+1,000,000) | 330,645円 |
教育費や老後資金など、他の重要な支出とのバランスを考えながら余剰資金を活用して繰上返済を行うことで、返済負担を大幅に軽減できるでしょう。
借り換えや返済期間の見直しを定期的に検討する
現在のローンよりも好条件のサービスが登場した場合や、市場の金利が大きく低下した際には、住宅ローンの「借り換え」が有効な選択肢となります。借り換えには手数料などの諸費用がかかるものの、金利差による支払総額の軽減のほうが大きいと判断できれば、借り換えを検討する余地は十分にあります。
参考までに、ローン残高2,500万円で返済期間30年、金利が年2.0%から1.5%の商品へ乗り換えた場合の返済計画を、以下の表にて比較してみました。
| 毎月の返済額 | 総返済額 | |
|---|---|---|
| 年2.0% | 92,404円 | 33,265,615円 |
| 年1.5% | 86,280円 | 31,060,610円 |
| 差額 | 6,124円 | 2,205,005円 |
上記の表より、借り換え時の手数料が220万円以下であれば、借り換えをしたほうがお得と言えます。
数年に一度は現在のローンの契約内容よりも有利な条件がないか探し、シミュレーションしてみてください。
団体信用生命保険でリスクに備える
返済期間中の万が一に備えるために、団信に加入しておきましょう。団信があるおかげで、契約者に万が一のことがあっても残された家族は住まいを失うことなく、その後の生活を立て直しやすくなります。
さらに、がんや三大疾病などの特約を付帯させることで、特定の病気と診断された場合にでも適用されます。ご自身の健康状態や家族への想いを考慮し、適切な保障内容を選択することが、安心して返済を続けるための精神的な支えとなるでしょう。
無理なく返済できる範囲で資産形成に取り組む
住宅ローンの返済を優先するあまり、将来のための資産形成を後回しにすることは、トータルで見ると損をしているかもしれません。ローン返済と並行して少額からでも資産形成に取り組むことで、教育資金や老後資金を効率よく準備できます。
近年では、NISAやiDeCoといった税制優遇制度を活用できるため、従来の投資よりも多くのお金を手元に残せます。
むしろ、あえて返済期間を長めに設定して月々の返済額を抑え、その分浮いた資金を資産運用に回す戦略も有効です。
ローン返済と資産形成の2つを、バランスを取りながら両立させることで、長期的な家計の安定と豊かさにつながるでしょう。
転職・休職・育休など収入減のライフイベントを想定して備える
数十年にわたる返済期間中には、転職や病気による休職、出産・育児に伴う収入減少など、さまざまなライフイベントが起こりえます。
こうした収入減のリスクに備え、あらかじめ数ヶ月分の生活費とローン返済額を合わせた「生活防衛資金」を確保しておくことが極めて重要です。また、当初から夫婦どちらかの収入だけで返済可能な借入額に設定しておくと、安心感が格段に高まります。
万が一返済が困難になった場合に利用できる返済猶予制度などについて知識を持っておくことも、不測の事態を乗り切るための備えとなるでしょう。
住宅ローンを無理なく返せる額は人それぞれ!あらゆる要素を基に判断することが大切

住宅ローンを無理なく返済できる金額は人によって異なるものの、算出する際は「年間返済率」と「年収倍率」の2つの指標が参考になります。いずれも客観的な判断材料であるものの、それらの数字がすべてではありません。
最適な借入額を決定するうえではご自身のライフプランや家族構成、将来の夢、価値観など、あらゆる要素を考慮する必要があります。
金融機関が提示する「借りられる額」に惑わされることなく、将来のあらゆる可能性を考慮し、ご自身の家庭にとって本当に「返せる額」を見極めることが大切です。無理のない返済計画を立てることが、幸せなマイホーム生活の第一歩となるでしょう。
「住宅ローンを無理なく返済したいけど、計画を立てるのが難しい……」と感じる方は、ファイナンシャルプランナーの土田までご相談ください。将来の理想とする生活に基づいたライフプランを作成させていただき、それを元に無理なく返済できる金額を提示させていただきます。
まずは無料相談から対応しておりますので、些細な悩みであってもお気軽にご相談ください。

